『匠味(たくみ)バーガー』
モスバーガーで「予約限定」「数量限定」という超厳重警備で販売されている謎多きハンバーガーのことである。
【匠】とは、三省堂「大辞林」によると「すぐれた技術をもつ人」とある。
つまり、「匠味バーガー」は私なりに解釈すると「ハンバーガーにおけるすぐれた技術をもつ人が織り成す味のバーガー」なのである。
実は、前々から気にはすごいイキオイで気になってはいたのだが、ファストフードハンバーガーにしては破格の高い値段設定と、一見さんはお断りするかのような気高さでなかなか一線を越えることができなかった。
が、この前、ふと「買ってみれば?」という真夜中の買い物の神様のささやきがあり、買うことにした。
余談だが、この真夜中の買い物の神様は、時々私の耳元に現れては悪さをすることがある。
真夜中のコンビニ、真夜中のデニーズ、真夜中のドンキホーテ・・・あらゆるシーンに登場して、私に不必要なものを買わせるのである。
困ったことに、私はこの真夜中の買い物の神様が嫌いになれない(笑)。文句言っている割には、実は結構好きだったりする。
しかも、嫌いになれないこの私のありさまをきっとヤツも知っている。だから、多少無茶なオーダーも平気でしてくる。
こうして、私は浪費するのである。
この日も、いつものようにモスバーガーを買おうとした私に、倍はする匠味バーガーをオーダーしてきた。
ここまで来たらもう止められん。
予約限定&数量限定なので、ちょっと心配げにお店のおにいちゃんに匠味バーガーをオーダーしてみる。
ポスターに一日10個限定と書いてある。かなり望み薄だ。
が、予想に反して、店員は笑顔で「大丈夫ですよ!」と言った。
これは、美味しいので一人でも多くの人に食わしてやろうという思いやりからなのか?
はたまた夜中の1時現在でもまだ10個以下しか売れていないという難アリのバーガーということなのか?
不安を抱えつつ、匠味チーズバーガー640円のお金を払う。
店員は続けて、「こちらの匠味バーガーはお時間20分少々いただきます」と言ってきた。
20分!!!まさか、今からバーガーをこねるつもりなのだろうか・・?
【匠】というくらいだから、きっと超・手作り、超・愛情仕上げのはず!それくらいの可能性はあるぞ・・・。
ハンバーガー1つで、だんだん、楽しくなってきた。
初めてのものは、何でも楽しい。
おとなしく待つこと、20分。
お待ちかねの匠味バーガーが手元にやってきた。
「それ」は、かなり大き目のバーガーボックスに入っていた。
開けてみると、バーガーボックスの中でさらにバーガーペーパーにくるまれている。
超厳重体制だ。
数々の厳重警備を乗り越え、やっと匠味バーガーにご対面してみる。
大きなバーグに、ほどよく炒めた玉ねぎの香りがなかなか良い。
食してみる。おいしゅうございます。
でもね、美味しいけど、640円と言われると、そこまでか??って思う。
しかも、巨匠の味のハンバーガーとまで銘打っていているのに、うーむ・・・という感じ。
要は、大きいし、それなりに美味しいけど、結論として普通のハンバーガーなのだ。
納得いかん。
【匠】という、日本人のココロを安心させる和漢字の雰囲気と、なんだか味に頑固そうで、とことん追求しました!みたいな漢字一字に見事に踊らされてしまった。
もう、モスバーガー店内でブレイクダンス状態である。
これが、仮に【匠】と同義の「専門家バーガー」とか「技術者バーガー」だったら、どうだろう。
なんとも、まずそうではないか。
コトバというのは、実に不思議な力を持っている。
全く同じものを数倍も美味しくしたり、また逆にまずくすることもできる。
それだけ、私たちの意識と感覚、今回で言えば味覚が連動していることを意味する。
今回は、ちょっと大き目のハンバーガーと、【匠】というコトバに出会えたことに 640円を払ったことで、良しとしようじゃないか。
なぁ、真夜中の買い物の神様よ。
■今日のカメ。
◆匠味バーガーの店内ポスター

私が店員でもきっとそうしてる。
だって、真剣な顔でハンバーガーのポスターの写真撮影してるんだもん、真夜中に。
◆これが、匠味。

ただ、640円という価格と、匠味という最高級の名称を背負うには、どうかな・・・という感じなんだよね。